広告宣伝費ゼロでマスコミに載る広報マーケティングの方法 21戦略整理シート・プレスリリースの書き方(実践編4)

広告宣伝費ゼロでマスコミに載る広報マーケティングの方法
21 戦略整理シート・プレスリリースの書き方(実践編4)

「戦略整理シート」の項目

➊目的
➋目標
➌ターゲット
➍ターゲットメディア
➎記載内容=6W5H
WHO(誰が)
TO WHOM(誰に)
WHEN(いつ)
WHERE(どこで)
WHAT(何を)
HOW(どのように:手段・方法)WHY(なぜ:志・想い)
HOW LONG(期間)
HOW MANY(数量)
HOW MUCH(金額等)
HOW IN THE FUTURE
(今後のビジョン・方針)
➏ニュースバリュー
➐プレスリリース後目的達成する手段
 
次の「戦略整理シート」は、色えんぴつアーティストの宝珍幸子さんのものです。色鉛筆を使い、写真にしか見えない超絶技巧で猫や花、風景を描いてきました。個展を開催するのでそのPRをしたいと相談に来られました。

➊目的
①自身の色えんぴつ画の個展にたくさんの方々に見に来てほしい
②自身の色えんぴつ画の教室に来てほしい
③自身の色えんぴつ画を買ってほしい
④色えんぴつ画というもの、その創作の楽しさを知ってほしい

ここに書かれているような目的を書きましょう。プレスリリースを送るのはマスコミに載ることが目的ではありません。マスコミに載ることはあくまでも中間的な目標です。その先に本当の目標があるはずです。売上拡大とか、優秀な人材の確保とか、その目的を書きましょう。この例では、色鉛筆画個展の来場者拡大、ひいては色鉛筆画教室の生徒獲得と色鉛筆画の作品販売が直接的な目的です。

➋目標
個展来場者数●●●人

大まかでもけっこうですので、教室の生徒数や、作品の売上金額など、具体的な期限付き数値目標に落としこみましょう。いつまでにどこまで達成するのか測定できるようにしましょう。

➌ターゲット
個展会場周辺に住む、子育てが一段落したアートに関心のある、経済的に余裕のある、五十代前後の専業主婦。家族構成は夫と子供二人。夫は一部上場企業の中間管理職。住居形態は戸建て持ち家。性格は落ち着いたタイプ。趣味は美術鑑賞、映画鑑賞、手芸などの創作活動。接触メディアは、新聞、テレビ、女性雑誌など。

できる限り、性別・年代・職業・年収・未既婚・家族構成・住居形態・性格・趣味嗜好・ライフスタイル・関心事・接触メディアなど、具体的に詳しくイメージしてください。メディアを選定するときに参考になります。

➍ターゲットメディア
テレビ・新聞・雑誌(女性雑誌)
テレビは、「日曜美術館」「美の巨人たち」
新聞は、朝日新聞・読売新聞の文化面、日経新聞日曜版アート特集。雑誌は家庭画報、婦人画報、和楽、クロワッサン。

テレビはよく見る番組名・コーナー名、新聞も新聞名・よく見る面・雑誌も雑誌名・よく見る特集記事など、できるだけ細かく設定しましょう。
そのためには、よくメディアを研究することが大切です。メディアを知ることが広報PRの第一歩です。朝から晩まで、できるだけ幅広いメディアを視聴しましょう。もちろん1人で1日に視聴できるメディアには物理的に限界がありますので、カバーしきれないメディアはホームページで調査しましょう。編集内容・読者特性・記事番組構成などを探究すれば、貴社の商品サービスターゲットに合うメディアがきっと見つかります。それをピックアップしましょう。

➎記載内容=6W5H
WHO(誰が)
宝珍幸子が

TO WHOM(誰に)
➌のターゲットと同じです。  

WHEN(いつ)
個展開催期間

新商品の発売日やイベントの開催日のような特定のタイミングがない場合は、記者さんが取材したくなるタイミングを創り出しましょう。何らかの季節イベントや年間イベントにからめるとか、時事的なトレンドに関連づけるとか、マスコミが関心を持ちそうなタイミングを探して設定するのです。

たとえば、美術に関心が高まる「文化の日」に関連づけるとか、猫の作品が多いので、2月22日の「猫の日」に合わせてイベントをするとか、何か理由をつけてプレスリリースを出すのです。マスコミの記者さんが納得できる理屈をつけて興味を引くことが大切です。
「なぜ今取り上げなければいけないのか」
こう聞かれたときすぐ答えられるようにしてください。現場の記者さんはその答えに納得できて初めて、決定権のあるデスクを「子の件、かくかくしかじかの理由で取材させてくれ」と説得してくれるのです。

WHERE(どこで)
大阪府枚方市ギャラリー××

WHAT(何を)
宝珍幸子の、色えんぴつ画個展  

HOW(どのように:手段・方法)
自作の色えんぴつ画約50点を貸しギャラりーで展示

WHY(なぜ:志・想い)
後述の「ドラマを引き出す5つの質問」
で、紹介します。

HOW LONG(期間)
10月✕日~✕日までの1週間
 
HOW MANY(数量)
HOW MUCH(金額等)
今回は出せる数字がなかったのでパスしました。書けない項目は無理に書く必要はありません。

HOW IN THE FUTURE
(今後のビジョン・方針)
後述の「ドラマを引き出す5つの質問」で紹介します。

ドラマを引き出す5つの質問

Q1 あなたは、なぜ、それをするようになったのか?(動機、キッカケ、出会い)
幼い時から絵が得意でした。美大を出たわけでもなく、主婦業と子育てで忙しく、絵を描きたくても描く時間がありませんでした。

Q2 あなたは、今、どんな志・想いで、それをやっているのか?(志、想い、原点)
子育てが一段落して、狩野派や琳派が大好きで長年の夢だった日本画の勉強を始めました。その後興味関心の赴くままに次々と押し花、型染め、彫紙アートのインストラクター資格を取得、気が付けば、押し花は3年、型染めは10年以上のベテラン講師になっていました。 

Q3 あなたが、失敗したことは何か?どう克服したのか?(失敗、障害、敵、試練、克服)
60歳を目前に。だんだん型染めもしんどくなってきました。そんなとき、高齢者の脳トレにも最適とテレビでも取り上げられ大人気の「大人の塗り絵コンテスト」に型染めで応募、入選をキッカケに「インストラクタ養成講座」で色鉛筆画と出会いました。

Q4 あなたが、成功したことは何か?なぜ成功したのか?(成功、武器、味方、勝利)
「大人の塗り絵インストラクター(河出書房新社公認)」資格を取得し、5年前から色えんぴつ教室を始めました。
2017年大人の塗り絵コンテスト コロリアージュ賞、2017・2018年 日美展 色鉛筆画部門 審査員奨励賞、2017・2018年 上野の森美術館 日本の自然を描く展 入選/上位入選など多数受賞しました。 
最初は手軽さから始めたのですが、そのうち色鉛筆画の奥深さにはまってしまい、今ではすっかり色鉛筆画の虜です。

Q5 あなたは、その活動で、どんな世の中を実現したいのか?(理想、ビジョン、あるべき姿)
人生100年時代、できるだけ多くの方に色鉛筆画の楽しさ・創造の喜び・成長するやりがいを、一緒に味わって欲しいという想いで、楠葉生涯学習センター他4カ所に教室を広げ、老人ホームでのボランティア活動も始めました。これまで絵を描いたこともなかった高齢者の方がみるみる上達して喜んでいるのを見るのが大好きです。

ここまでドラマチックな方は少ないと思いますが、それでも皆さん一人ひとりに小さなドラマがあると思います。ささやかな想い、ひそやかな失敗・挫折、哀しみと怒り、そして小さな成功、喜びと笑顔、自分なりの夢と希望があると思います。それを書いてください。

➏ニュースバリュー
宝珍さんのニュースバリューは何でしょう?もちろん、写真のような色えんぴつ画の超絶技巧という「独自性・希少性」もあるでしょう。「人生100年時代の生き方」という「社会性」もあると思います。そして「ドラマ性」マスコミの記者さんの心を動かす条件は揃っています。

➐プレスリリース後、目的達成する手段
記者クラブへの投げ込みの後、個別に地元メディアへの電話フォロー、訪問アプローチなど、思いつくあらゆる手段を実行します。
個展会場では、アンケートに答えていただいて連絡先など個人情報を入手し、後日お礼とともに教室に勧誘します。
マスコミに掲載されれば、その記事をホームページに掲載し、入社案内や教室での配布資料にも転載します(※マスコミの許可が必要)。

このように目的・目標を常に念頭に置き、マスコミを味方にして目的・目標を達成する具体的な作戦を必ず立てておいてください。前もって考えておかないと、一時のブームで終わってしまいますので、くれぐれもご注意ください。

プレスリリースのひな型に記載されている項目

➊レターヘッド
➋配信宛先
➌配信日付
➍配信元
➎タイトル
➏写真・図表等ビジュアル
➐リード
➑本文(独自の提供価値)
➒本文(商品概要・企画概要)
➓本文(背景・社会的課題・志・想い)
⓫本文(失敗・苦労話・克服要因) 
⓬本文(成功・課題の解決・成功要因)
⓭本文(理想・ビジョン・今後の方針)
⓮問合せ窓口
⓯会社概要

宝珍幸子さんのプレスリリースです。

➊レターヘッド
特にないので入れていません。

➋配信宛先
一般的な「報道関係者各位」と、投げ込みする各記者クラブの名前を書いています。

➌配信日付
配信した日付です。

➍配信元
宝珍さんの肩書と名前だけです。

できればURLも入れた方がいいです。

➎タイトル
人生100年時代、60歳を目前にして色鉛筆画を始めた、枚方の主婦が
高齢者に、表現する楽しさ・創造する喜びを知ってほしいと、個展を開催!

一番目につく文頭に「人生100年時代」というトレンドキーワードを記載、記者さんの目を引くことを狙いました。
タイトルの骨格は「誰が何をする(した)ですので、「枚方の主婦が、個展を開催」と明示しました。
「高齢者に、表現する楽しさ・創造する喜びを知ってほしい」という文言で、単なる個展の宣伝・売り込みではない「社会性」が感じられるようにしました。
 
➏写真・図表等ビジュアル
 一番の売り物である色えんぴつ画の受賞作をできるだけ多く掲載しました。論より証拠、超絶技巧は作品を見ていただくのが一番早い、そう考えたからです。
 
➐リード
“色えんぴつ日本画アーティスト・宝珍幸子”は、20××年✕月××日~××日、枚方園「ギャラリー○○」にて、超絶技巧を駆使して制作した、超高精細の色えんぴつ日本画の個展を開催します。

➑本文(独自の提供価値)
ポイント①人生100年時代、ごく普通の主婦が、子育て後に、「第3の人生」に挑戦!
ポイント②手軽に始められ生涯学習に最適、と静かなブームの色鉛筆画を啓蒙!
ポイント③色鉛筆画では珍しい「日本画」の伝統美を、写真を超えるリアリティで追求!

5W1Hの「WHY」にあたるポイントを要約して本文の最初に提示する方法も有効です。記者さんにニュースバリューを一瞬にして伝えることができます。

➒本文(商品概要・企画概要)
現超絶技巧!ジャポニズム色えんぴつアーティスト・宝珍幸子 展

日時:×月✕✕日~✕✕日 10時~18時(最終日は17時)
場所:ギャラリー○○
住所:枚方市・・・・・・
TEL:072-・・・・・・

※1 期間中随時「色鉛筆画のミニ実演会」を開催予定
※2 後日、色鉛筆画教室の無料体験も可能(要予約)
※3 展示作品の販売も可能、当日、本人にお問合せください

 5W1Hの「WHO」「WHAT」「WHEN」「WHERE」「HOW」を、箇条書きにして提示しています。箇条書きは見やすくわかりやすいのでぜひ活用してください。
 
➓本文(背景・社会的課題・志・想い)
幼い時から絵が得意でした。美大を出たわけでもなく、主婦業と子育てで忙しく、絵を描きたくても描く時間がありませんでした。
子育てが一段落して、狩野派や琳派が大好きで長年の夢だった日本画の勉強を始めました。その後興味関心の赴くままに次々と押し花、型染め、彫紙アートのインストラクター資格を取得、気が付けば、押し花は3年、型染めは10年以上のベテラン講師になっていました。 

 活動のキッカケ・動機を記述しています。「あなたはなぜそれをやるのか」
あなたの人生ドラマに記者さんを引き込みましょう。

⓫本文(失敗・苦労話・克服要因)
60歳を目前に。だんだん型染めもしんどくなってきました。そんなとき、高齢者の脳トレにも最適とテレビでも取り上げられ大人気の「大人の塗り絵コンテスト」に型染めで応募、入選をキッカケに「インストラクタ養成講座」で色鉛筆画と出会いました。

⓬本文(成功・課題の解決・成功要因)
「大人の塗り絵インストラクター(河出書房新社公認)」資格を取得し、5年前から色えんぴつ教室を始めました。
2017年大人の塗り絵コンテスト コロリアージュ賞、2017・2018年 日美展 色鉛筆画部門 審査員奨励賞、2017・2018年 上野の森美術館 日本の自然を描く展 入選/上位入選など多数受賞しました。 
最初は手軽さから始めたのですが、そのうち色鉛筆画の奥深さにはまってしまい、今ではすっかり色鉛筆画の虜です。

⓭本文(理想・ビジョン・今後の方針)
人生100年時代、できるだけ多くの方に色鉛筆画の楽しさ・創造の喜び・成長するやりがいを、一緒に味わって欲しいという想いで、楠葉生涯学習センター他4カ所に教室を広げ、老人ホームでのボランティア活動も始めました。これまで絵を描いたこともなかった高齢者の方がみるみる上達して喜んでいるのを見るのが大好きです。

理想・ビジョンを表明しています。この部分があることにより、このプレスリリースは単なる自身の儲けのためだけの宣伝・売込チラシ「広告」ではなくなります。世の中の役に立つ「情報提供」という大義名分を獲得することができるのです。記者さんの心を動かすのはここです。 
 「あなたはそれを通じてどんな世の中を実現しようと思っているのか」
 記者さんの質問の回答がこの部分です。

⓮問合せ窓口
 最低限の携帯電話番号、メールアドレス、を書いています。

 他に固定電話番号、FAX、住所をはじめ、LINE公式アカウントやFACEBOOK、INSTAGRAMやTWITTERなど、SNSのアカウントURLを記載するのも良いと思います。ターゲットに合わせて取捨選択して掲載してください。
  
⓯会社概要
 この方は個人事業主なので会社概要については割り切って記載していません。個人の場合は、プロフィール(資格や特技、免許など)や各種実績(セミナーや研修、受賞歴など)を記入し、専門性・権威性・信頼性を印象付けてください。
 とにかく、マスコミは変な人とは付き合いたくないのです。一皮むけば自社の儲け第一主義で自分勝手な商品サービスの売込のことしか考えていない連中とは関わり合いになりたくないのです。良識ある大人と付き合いたいのです。
 もちろんこの本を読んでいるあなたはそんな方ではありませんので、そのことを分かってもらえるような客観的事実をここに明記してください。

 「戦略整理シート」「プレスリリース」の書き方を実例を通じてお伝えしてきました。ここが最も大切なキモです。ここができるようになれば、後はどちらかといえば事務的な作業です。しっかりと理解してください。

次回に続けます。

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